相続土地国庫帰属制度
相続をきっかけに土地を受け継いだものの、「遠方の土地で管理ができない」「草刈りや固定資産税が負担になる」「子どもに迷惑をかけたくない」といった理由で、土地の扱いに悩む方は少なくありません。
しかし、土地を所有している限り、税金・草木や廃棄物の管理・災害や倒木などの責任 といった義務が続きます。
このような管理負担や将来のリスクを軽減するために整備されたのが相続土地国庫帰属制度 です。
この制度を利用することで、一定の条件を満たした土地は、所有者が国へ引き渡し、管理義務と責任から解放されることができます。
1.利用できる人
この制度を利用できるのは、相続や、相続人への遺贈により土地を取得した人 です。
共有名義の土地の場合は、共有者全員で一緒に申請する必要があります。
2.手続きの流れ(3ステップ)
① 法務局へ相談
土地の所在地域の法務局へ相談予約を行い、土地が制度対象になり得るか確認します。
② 書類作成・申請
申請書土地の位置や広さがわかる図面境界や現況の写真印鑑証明書 などを準備し、審査手数料(1筆14,000円) を添えて提出します。
③ 審査 → 負担金納付 → 国に所有権が移転
現地調査を含む審査がおこなわれ、承認された場合は負担金(1筆20万円が基準) を納めます。納付した段階で土地は国に移り、管理・責任から解放されます。
3.引き渡せない土地があることに注意
次のような土地は申請しても承認されにくい傾向があります建物が残っている土地(解体が必要)
抵当権・借地権・地役権などが残っている土地境界が曖昧な土地(測量が必要になる場合あり)
崖地・山林など、管理に多大な負担がかかる土地他人が通路や水路として使用している土地→ 「手放したい理由が大きい土地ほど条件に引っかかりやすい」点は制度上の大きな特徴です。
4.利用するには、どのくらい費用がかかる?
この制度は、「いらない土地を無料で国に渡せる」という制度ではありません。
まず、申請時には土地一筆につき14,000円の審査手数料が必要です。この手数料は、申請を取り下げたり、却下・不承認になったりしても返還されません。
さらに、承認された場合には、国が土地を管理するための「負担金」を納付します。
負担金は20万円が基本ですが、すべての土地が一律20万円というわけではありません。森林や一定の宅地・農地などは、面積等に応じて算定されます。
このほか、土地の状況によっては、建物の撤去や境界の確認、申請書類の準備、専門家への依頼などに費用がかかることもあります。
「手放せるかどうか」と一緒に、「手放すまでにいくら必要か」も確認しておきたいところですね。
土地の条件については、次のように整理します。
申請できない土地と、審査で不承認になる土地は別です
例えば、建物がある土地や、境界が明らかでない土地などは、申請できない土地に該当します。
一方、申請できる土地でも、管理に支障となる一定の崖や地上・地下の物があるなど、法令上の不承認要件に該当すると、国に引き取ってもらうことはできません。
また、「山林だからダメ」「農地だからダメ」と、土地の種類だけで一律に決まるわけではありません。
実際の土地の状態を確認し、申請前に法務局へ相談することが大切です。
5.制度に対する社会的な課題・批判点
対象となる土地が非常に限定されている→ 山林・農地・崖地・放置空き地は承認されにくい手放すのに費用がかかる→ 「不要な土地にお金を払わないといけない」という心理的負担準備資料や申請手続きが複雑→ 境界資料・測量・土地状況確認など、専門性が高い→ そのため、制度が「救済」や「簡単な負担解消」になるケースは限定的 といえます。
本レポートは、相続土地国庫帰属制度の内容を、一般の方にも理解しやすい形で整理した説明資料です。制度の全体像や手続きの流れについて、できる限り平易な表現を用いて解説しております。
ただし、実際に土地を国に引き渡す手続きが可能かどうかは、土地ごとに状況が大きく異なります。
土地の地形、境界の明確さ、登記の状態、地役権・担保権等の権利関係、建物や工作物の有無など、個別の事情を丁寧に確認する必要があります。
また、申請にあたっては・・・相続登記・所有権関係の整理(司法書士が関与する場面)
境界確認や測量・図面作成(土地家屋調査士が関与する場面)
土地の建物解体・伐採・整地など工事が必要となるケース(施工業者が関与する場面)
など、行政書士だけで完結しない領域も存在します。必要に応じて、各士業・専門業者との連携が不可欠となります。
さらに、制度利用にかかる費用は、審査手数料・負担金(制度上必須の費用)に加えて、測量費、境界確定費用、建物解体費等、土地の状況に応じた追加費用が発生する場合があります。
したがって、制度の利用を検討される際には、「制度にかかる費用」だけで判断するのではなく、追加で必要となる可能性がある費用も含めて、総合的に見通しを立てることが重要です。
遺言・相続・離婚協議書のご案内
遺言、相続や離婚協議書に関する書類作成については、当事務所の業務案内をご覧ください。


コメント